こんにちは、ヨルです。
突然ですが、「シュルレアリスム」という言葉、ご存知ですか?
ダリの溶けた時計や、 マグリットの空に切り取られた鳥のシルエットなど、絵を見かけたり名前を聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。
近頃は、理解しがたいものや非現実的な物事に対して「シュールな笑い」とか「シュールな映像」とか表現することがありますね。
実は私、学生の頃からこの「シュルレアリスム」関連の作品が大好きでして…
今回ご紹介する展覧会では、「シュルレアリスム」の草創期から日本での発展まで、その歴史と変遷をたどることができます。
「シュルレアリスム」って何なの?
シュルレアリスムとは、20世紀の芸術に最も大きな影響を及ぼしたといわれる芸術運動の名称です(フランス語です)。
当時は理性を中心とした近代的な考え方が支配的でしたが、そんな中でシュルレアリストたちは、精神分析学の影響を受けて、理性の及ばない無意識の世界に「超現実」という新たなリアリティを追求しました。
具体的にどんな方法で無意識の世界を表現したかというと、
などの方法が代表的です。
板をこすることで現れた模様や絵の具を削ることで現れた色味など、「偶然に=意図的ではない=無意識に」生み出されたものを使って、理性や判断を超えた「超現実」を表現しようとしたんですね。
展覧会の特設サイトに詳しい説明が出ていますので、ぜひ参照してください。
作りも凝っていておもしろいですよ!
展覧会の見どころは?
「眼は野生の状態で存在している」
こちらは展示室入ってすぐにあったフォトスポットです。ここのみ撮影可能でした。
元は、マックス・エルンストの『博物誌』より、《光の輪》という作品です。瞳孔部分の穴から顔を出せるようになっています。
シュルレアリスムの創始者であるアンドレ・ブルトンは、著作『シュルレアリスムと絵画』を「眼は野生の状態で存在している」という一文で始めています。
展覧会の最初に、最初のシュルレアリストの言葉をモチーフにした展示を持ってくるなんて、憎い演出ですね!
展覧会は4部構成、束芋氏の特別展示も
Chapter1では、1920年代、シュルレアリスム草創期に活動していたエルンストやジョルジョ・デ・キリコの作品が見られます。
エルンストはコラージュやフロッタージュを使って偶然のイメージを掴むことを得意としていましたが、サルバドール・ダリは特定のイメージの反復や一つの作品に多重に意味をもたせる「偏執狂的=批判的」方法を得意としていました。
Chapter2では、対照的な二人の作品を中心に、ルネ・マグリットなどの作品も見ることができます。
1930年代になると、日本でもシュルレアリスム"的"な運動が見られるようになります。
"的"と表現したのは、本来のシュルレアリスムは「理性の外にある無意識の世界を探求するもの」でしたが、日本では「現実の外にある幻想的な世界を表現するもの」として捉えられたからです。
この日本的シュルレアリスムが独自の発展を遂げ、私達が日常で使う「シュール」という感覚になったんですね。
Chapter3では、古賀春江や三好好太郎など、日本的シュルレアリスムの作品が展示されています。
続くChapter4では、戦後に活躍した作家たちの作品が見られます。
つげ義春『ねじ式』や岡上淑子の他、成田亨氏によるウルトラマンのデザインもここに分類されており、驚きました。
最後に、現代美術作家の束芋氏による特別展示がありました。
特に映像インスタレーション《dolefullhouse》は圧巻で、食い入るように見てしまいました。
また、この先に進むと常設展示エリアとなっており、モネやルノワールなど、ポーラ美術館のコレクションを楽しむことができます。
関連企画展や限定メニューなど、他にも見どころがたくさん
展覧会に連動して、「モードとアートの香水瓶」という関連企画をやっていました。
ダリは特徴的なヒゲと派手な活動でメディア露出も多かったのですが、そんなダリの前衛的な表現をモードに取り込んだエルザ・スキャパレッリの世界観を見ることができます。
写真は彼女のデザインした香水瓶『ショッキング』。
女性シュルレアリストのレオノール・フィニがデザインを手掛け、パッケージに使われたピンクは「ショッキング・ピンク」と名付けられました。
派手目のピンク色を「ショッキングピンク」なんて言ったりしますけど、この香水が名前の由来だったんですね…!
ディオールやゲランの香水瓶もあるので、香水好きの方も楽しめますよ。
館内にあるレストラン「アレイ」では、展覧会からインスピレーションを受けた限定コースメニュー「スペインの風」が楽しめます。ダリの故郷であるスペイン料理をアレンジしたそうです。
窓辺の席からは広々としたバルコニーが見え、大きな窓から陽が入って気持ちいです。天気のいい日はこの席を狙ってみましょう。
ミュージアムショップでは、ピーカンナッツやトートバッグなど、展覧会限定グッズを取り扱っていました。
ダリやシュルレアリスムをイメージしたコンピレーションCDもあったので、興味があれば聴いてみてください。
余談ですが、ポーラ美術館の外にはブナやヒメシャラ、小川のせせらぎが堪能できる遊歩道があります。
20分程度で回れるので、食後の腹ごなしやバスの待ち時間の暇つぶしなどに散策してみるといいかもしれませんね。
まとめ
シュルレアリスムと絵画―ダリ、エルンストと日本の「シュール」、いかがでしたか?
シュルレアリスムの創成期から発展、日本での独自の進化を満遍なく見ることができるので、初めてシュルレアリスムに触れるという方にもおすすめできる展覧会だと思います。
個人的には、エルンストをはじめとする好きな作家の作品がいろいろ見られたし、新しく好みの作家とも出会えたのでテンション上がりました。
もう少し展示作品数が多くてもよかったかも。
気になったら是非チェックしてみてくださいね!