こんにちは、ヨルです。
突然ですが、「ドラァグクイーン」と呼ばれる人たち、ご存知ですか?
映画などに架空のキャラクターとして登場する機会も多い文化ですが、実在する彼/彼女たちの姿を見たことは、あまりないのではないでしょうか。
本展覧会では、ニューヨークとパリで活躍するクイーンたちの生き様を、鮮やかな写真とインタビューで垣間見ることができます。
どんな展覧会なの?
フォトグラファー ヨシダナギの審美眼を刺激した「ドラァグクイーン」。女性の性をモチーフとして、自己表現へと昇華するその存在はカルチャーという枠を超え、次世代の生き方を世の中へ示すほどの影響力を持ちつつあります。そんな魅力あふれる彼女たちにスポットライトを当てたヨシダナギの次なる人間賛美をご覧ください。
出典:展覧会フライヤー
ヨシダナギ氏の、展覧会と同名の新作品集の発売を記念して、3都市を巡回する展覧会です。
新作品集の特報ショートムービーはこちら。
この短い映像でも、ドラァグクイーンの存在感や生き様、ゾクゾクするほどの美しさが伝わってきますね。
ミステリアスで妖しいドラァグクイーンたちの、パワフルかつ美しい姿を堪能できる貴重な機会です。
彼/彼女たちの、ドラマチックでまばゆく輝く世界観は必見ですよ!
そもそもドラァグクイーンとは
ドラァグクイーンとは、女装で行うパフォーマンスの一種です。
ドラァグ(drag)は、元々「引きずる」という意味で、今では「女装した男性」も意味します。
この意味が派生した理由には諸説ありますが、昔、舞台で女装して女役を演じた男性が、不慣れなロングスカートの裾を引きずっていたことに由来する、演劇界の隠語だとする説が一般的です。
麻薬や薬物を意味するドラッグ(drug)とは無関係なので注意です!
ドラァグクイーンという文化は、男性の同性愛者が性的指向の違いを超えるための手段として、ドレスやハイヒール、厚化粧などの派手な風貌をすることで、男性が理想とする「女性」を過剰に演出したことが起源だと言われています。
そのため、クイーンにおける女装は、「女性になりたい」のではなく、「女性のパロディ」や「女性の性表現を遊ぶ」ことを目的としています。
あくまでベースは男性のまま、というのが特徴ですね。
フォトグラファー ヨシダナギ
独学で写真を学び、世界で活躍している女性写真家です。
「自分と違う人ほどおもしろい。かっこいい。」という信念のもとに、アフリカを始めとする世界中の先住民族や少数民族に会いに行き、撮影してきました。
今回、被写体にドラァグクイーンを選んだのも、自分と全く異なる人たちであるということが興味のきっかけとのこと。
唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、日経ビジネス誌で「次代を創る100人」、雑誌PENで「Penクリエイター・アワード2017」へ選出されたり、講談社出版文化賞写真賞を受賞したりと、今をときめく新進気鋭のフォトグラファーです。
展覧会の見どころは?
アメリカ・ニューヨークとフランス・パリの合計18人のドラァグクイーンが、鮮やかな写真とちょっとしたエピソードとともに紹介されています。
ヨシダナギ氏の語り口が軽妙で、説明文を読んでいてクスッとさせられることも。
会場内には、クイーンたちのインタビューや撮影風景などの短い動画が見られるスペースがいくつかあります。
きらびやかな見た目だけでなく、ここに至るまでの境遇や苦労、彼/彼女たちの考え方などを知ることで、ドラァグクイーンという文化に対する理解を深めることができます。
会場内は撮影OKだったので、お気に入りの写真をいくつか交えながら紹介していきますね。
もちろん、会場ではこの他にもたくさんの、美しく妖艶なクイーンの姿を見ることができますよ!
ニューヨーク
ニューヨークからは6人のドラァグクイーンが参加。
アメリカらしく鮮やかでポップ、そして前衛的な装いが多いですね。
特にヴァイルの宇宙的なメイク(攻殻機動隊のゲイシャロボットから着想得たそうです)は、私の中のドラァグクイーンの固定観念を覆すものでした。
彼/彼女らを見ていると、「こうあるべき」とかのしがらみに囚われず、「こうなりたい」を素直に表現してもいいんだと、励まされているような気持ちになります。
ちなみに、私のお気に入りはシェリー・パイ。
マッドハッター風の衣装や、ギラギラなのに泣いているようなアイメイクが素敵。
パリ
パリからは12人のドラァグクイーンが参加。
女性のクイーンがいたり、アフリカから来たクイーンがいたり、髭や胸毛をそのまま活かしているクイーンがいたり、とっても個性豊かです。
ニューヨークと比べるとシックでファッショナブルな雰囲気が漂うのも、パリのクイーンの特徴でしょうか。
各クイーンの紹介パネルには、「ドラァグクイーンは"威厳と尊厳"」「美しさとはある意味、自分へのしつけ」「誰だって何にでもなれるのよ!」等、彼/彼女たちの印象的な言葉が並んでいました。
写真だけでなく、クイーンたちの深い人生観に触れられる点も、この展覧会の魅力の一つですね。
男性であるクイーンたちは、身体の丸みをつくるため、要所にたくさんのパッドを詰めているのだとか。
メイクに5時間かかる人もいるらしいので、クイーンになる作業はまさに「変身」と呼ぶにふさわしいですね。
お土産も充実
そごう横浜店での展示は、出口の先に「NAGI Shop」と銘打ったポップアップショップが展開していました。
展覧会の基になった新作品集はもちろん、クイーンたちのガチャガチャ缶バッジ、アクリルフィギュアやブロックメモなど、お気に入りのクイーンのグッズを揃えることができます。
ヨシダナギ氏の既刊本や関連グッズも手に入るので、これを機に氏の作品を色々手にとってみるのもいいですね。
まとめ
「DRAG QUEEN No Light, No Queen」、いかがでしたか?
堂々とした姿勢と圧倒的な存在感を持ちながらも、ひとさじの哀愁が見え隠れする…
紆余曲折を経てドラァグクイーンという表現にたどり着いた彼/彼女たちだからこそ、深みのある独特の美しさや世界観を表現できるのかもしれませんね。
ミステリアスで妖艶、それでいてちょっとコミカルな彼/彼女たちのドラマチックな魅力は、とどまるところを知りません。
当記事は横浜会場を基に書いていますが、10月31日からは名古屋に巡回することが決まっています。
気になったら、お近くの会場をぜひチェックしてみてくださいね!
ドラァグクイーン全18人のインタビューが収録された特典DVD付きです◎